「源泉掛け流し」という言葉はご存知でしょう。
でもそれがどのような温泉なのかを知っている方は少ないと思います。
なぜかというと、そもそも「源泉掛け流し」の定義がとても曖昧なのです。
「掛け流し」と「循環ろ過」
「循環ろ過」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
浴槽のお湯を、ゴミを取り除き消毒しながら再利用する方法です。
ほとんどの入浴施設で使われる方法で、金城温泉でも公衆浴場の一部と家族風呂は「循環ろ過」で温泉を提供しています。
「循環ろ過」の詳しいことは後日ブログでも取り上げますが、温泉の入浴施設はこの「掛け流し」と「循環ろ過」の2種類だけだと思っていました…
「掛け流し」に種類があるなんて…
私が先日読んだ本「温泉失格」は、温泉宿や温泉施設の裏側を暴くとても面白い本です。
温泉施設側の立場としては考えさせられる内容でとても勉強になりました。
もちろん温泉好きの方にもおすすめできる一冊です。
この本の著者が「もっともわかりやすい定義」として書かれている内容を元に、「源泉掛け流しの種類と違い」そして「金城温泉はどれにあたるのか」を書いてみます。
「掛け流し」の違いを知ろう!
正式な源泉掛け流しの定義は存在しません。
これからあげる定義は「温泉失格」の中で日本温泉協会の定義として紹介されたものを、私が分かり易くするために一部変更しています。
掛け流し
- 「新しいお湯」を常に浴槽に注いでいる
- 注がれた分だけの湯が浴槽の外に「あふれている」
- あふれた湯は「浴槽に戻さない」
温泉掛け流し
- 「掛け流し」である
- 新しいお湯は「温泉」である
源泉掛け流し
- 「温泉掛け流し」である
- 新しいお湯は「水を加えてはいけない」
水を加えたらだめなのか?
単純に薄くなってしまうからですが、絶対に良くない訳ではありません。
水を加える理由は「湧出量が少ない」「濃すぎて設備に悪影響」「温度を適温にする(冷ます)ため」といったものです。
温泉には非常に濃い温泉からぎりぎり温泉まで様々です。
非常に濃い温泉が上の理由から水を加えたところで良い温泉に変わりはないです。
しかし、どのくらいの量の水を加えたのかが分からないため「良い温泉の見極めが難しい」ことは確かです。
源泉100%掛け流し
- 「源泉掛け流し」である
- 新しいお湯は「温度を上げてはいけない」
温度を上げてはだめなのか?
冷たいあるいはぬるい温泉を適温にするため加温する場合があります。
この時、温泉をボイラーなどで加熱することで温泉の成分が劣化してしまうようです。
しかし泉質によっては加温に影響されにくいもの(食塩泉)があったり、加熱手段によっては劣化しにくくさせることもできるので、これも「良い泉質の温泉の見極めが難しい」ことになります。
源泉掛け流しの実情
「(源泉)掛け流し」の定義が曖昧なため、温泉施設は各々の判断でこの言葉を使用してしまい、私たちのイメージと実際がかけ離れてしまっているようです。
※ 循環ろ過をしているにも関わらず一部をあふれてさせているから「掛け流し」と言ったり、ほとんど水で薄めているにも関わらず「源泉掛け流し」といっている施設もあるようです。
「温泉失格」の中で「源泉100%掛け流し」の理想的な温泉宿は、全体の10%程度と書かれています。
理想的な「源泉100%掛け流し」を実現するには、湧き出した温泉が奇跡に近い偶然か施設側の相当な努力が必要です。
その他の施設はその事実をあまり公にしたくない事情も当然あります。
「あえて曖昧なまま掛け流しと言っておこう!」という施設もあるようです。
曖昧にせず利用する方に分かり易い方法で提示して選んでいただけるようにならなければいけないですね。
※ 「温泉失格」では、その「あまり公にしたくない事情」など温泉の実情をさらに赤裸々に公開しています。
金城温泉は?
公衆浴場の一部の浴槽を「源泉100%掛け流し」として提供しています。
これは温泉が奇跡に近い偶然で適温(40℃)であることと、豊富な湧出量(2つある源泉の内毎分200Lの源泉を常時使用)のおかげです。
※ 参考文献:温泉失格(飯塚玲児 著・徳間文庫カレッジ)
コメント
昔から温泉が好きで県内いろんな温泉に行きました。このブログに出会って色々勉強できてます。
そこで質問です!
近くに温泉ができまして、毎日入りに行ってます。そこは『掛け流し』です。
この、『源泉掛け流し』と『掛け流し』の違いが、どうも理解できません。ちなみに源泉温度は47度と書いてありました。加水なしとも書いてありました。
どう言うことでしょうか。
教えていただけると毎日のお風呂がもっと楽しくなると思います。
でこちゃんさん。
コメントありがとうございます!
>『源泉掛け流し』と『掛け流し』の違いが、どうも理解できません
定義が曖昧な部分なので難しいですよね。
『掛け流し』ということばだけでは、それが「何を掛け流し」ているのかが分かりません。
極端な話では、井戸水を温めて使っていても「掛け流し」といっても間違いではありません。
そこで、その「何を」を明確にしたのが『源泉掛け流し』で、少なくとも「井戸水」ではなく「温泉」を掛け流していることがわかりますね。
そもそも『掛け流し』ということばも曖昧で、浴槽のお湯を再利用する循環方式との併用でも『掛け流し』と呼んでいる施設もあるようです。
このようにことばだけだと不明な部分が多いので、その他の情報から推測する必要があります。
でこちゃんさんのお近くの温泉は…
> そこは『掛け流し』です。
> 源泉温度は47度と書いてありました。加水なしとも書いてありました。
『掛け流し』を循環方式を使っていないとして「加水なしの掛け流し」ということは、『源泉掛け流し』であることがわかります。
加温についてはわかりませんが「源泉温度は47度」ということは温める必要もないので、ブログで書いた定義の『源泉100%掛け流し』に該当するのではないでしょうか?
湧出量がどのくらいかわかりませんが、湯量不足のための「加水」も行っていないことから、とても貴重で魅力的な温泉施設ではないでしょうか。
ちゃんとした回答になっていなければごめんなさい。
これからも素敵な温泉ライフを楽しんでくださいね。